毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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左:オペラ座こけら落としの日の様子。中央:ガルニエデザインのシャンデリア オペラ座(通称ガルニエ宮)右:オペラ座の怪人ポスター
1896年ガルニエデザインのシャンデリアが落下してしまい、事件はガストン・ルルーの小説「オペラ座の怪人」のエピソードに加えられました。

左:ウージェニー皇妃とその取り巻き右:クリノリン
ウージェニーとルイ・ヴィトン
ナポレオン3世の皇妃ウージェニーは、ドレスの下に付けるクリノリンのケースをフォーブール サントノレのマレシャル工房に注文しました。そこで働いていた職人ルイ・ヴィトンは優れた腕でウージェニーの信頼を得、やがてルイだけに仕事を任すようになりました。高級ブランド、ルイ・ヴィトンの始まりでした。

ルイ15世(1710-1774)
ロココとルイ15世
ルイ15世の時代、ロココ芸術は頂点を極めた。王自身、歴代君主の中で最も装飾に興味を持ち、ヴェルサイユ宮殿の改築には、自ら指示を与えました。セーヴル窯に出資し、王者のクリスタル・バカラ設立を認可するなど、装飾芸術を大いに支える存在でありました。

ブーシェ描くポンパドゥール公爵夫人(1721-1764)
ロココとポンパドゥール公爵夫人
ロココ芸術の偉大なるパトロンであったポンパドゥール公爵夫人は、画家フランソワ・ブーシェの才能を大いに評価し、肖像画を描かせるばかりでなく、ドレスやアクセサリーのデザインを任せ、王立セーブル窯やポーヴェーのゴブラン織工場のデザイン担当理事に任命し、フランス宮廷をロココ一色に塗り替えました。

ナポレオン3世
ルイ15世様式ギルドウッドミラー付
コンソールテーブル

1870年代 フランス

1875年1月5日。14年の月日をかけて改装したパリ・オペラ座(通称ガルニエ宮)の落成式が、華やかに開催されました。オペラ座改装はナポレオン3世のパリ改造計画の目玉プロジェクトとして実行され、新しい時代の象徴になるべく、絢爛豪華な空間がつくられました。
フランス大統領パトリス・ド・マクマオン伯爵、わずか18歳の初々しいスペイン王アルフォンソ12世、ロンドン市長夫妻、パリ伯、オルレアン家のプリンセス、前ハノーファー王など、名だたる王侯貴族や名士が招待され、会場は溢れんばかりの着飾った紳士淑女で埋め尽くされました。改装デザインを手がけたガルニエによる、きらびやかに「水晶の光を放つ」、7トンのブロンズとクリスタルガラスの巨大なシャンデリア、舞台のカーテンや客席は全て深みのある真紅で統一され、人々はパリにこつ然と現れた夢の殿堂の中で、幸福感に酔いしれながら幕が開く瞬間を待っていました。

今月の夢織のおすすめは、1870年代フランス製 ナポレオン3世 ルイ15世様式ギルドウッドミラー付コンソールテーブル。贅沢と幸福の絶頂にあった19世紀末パリの、上流階級の暮らしを見守った、洗練されたミラーとコンソールテーブルのセットです。
それでは細部を見て行きましょう。

        

幅43センチ、高さ164センチ。細く、長く壁に延びるミラー。女神の羽衣が、いたずらな風に乗って偶然壁にかかってしまったような風情。
黄金にきらめく登頂飾りのロカイユ。アシンメトリー(左右非対称)に左右に添えられた薔薇は、植物の気まぐれな姿を一瞬捕えた表現です。ロココ芸術の象徴であるロカイユ文様は、もとは庭園の洞窟の岩をイメージしているもので、ルイ15世の時代になると、次第に形状が洗練され、緩やかなラインで表されます。
18世紀、19世紀と時を経るにつれて、フランスの住居スペースはよりコンパクトになり、快適で使いやすいサイズの家具が求められるようになりました。

このミラーのサイズから推測して、パリの高級アパルトマンで使われていたものでしょうか。細長いミラーには、かつてどんな室内が映し出されていたのでしょう。トリミングされていた空間の豪華さが想像できます。

   

左右非対称でイメージ付けられる、気まぐれ・移り気・危うさ、そして豪華さが織りなす美の世界…。ロココはフランス装飾美術史上最も理想的なスタイルと評されます。
ミラーの頭頂部、左右に下がる花綱。そしてそれに響き合うように装飾された、下部のリボンに吊るされた可憐な花綱。かつて古代ギリシャ・ローマ時代には、祭事や儀式に使われた花綱が、装飾文様となり、バロック・ロココ時代を通じて建築・陶磁器・タピスリーのデザインなど工芸全般に使われるようになりました。
そしてすべてのラインが、S字型を描く左右の脚装飾に流れるように集結しています。

        

ミラーの下に装着されるコンソールテーブル。褐色の大理石の天板と、黄金の草花とのコントラスト。白い色彩が、重厚な大理石に繊細な美しさをもたらしています。

    

C字型、S字型に渦巻くアカンサスの葉。その葉先の変化や、そこかしこに添えられた薔薇とスミレの陰影が、金箔の色彩に深みを与えます。薔薇はヴィーナスや聖母マリアの花とされ、スミレは春を告げる花であり、ヨーロッパでは男性から女性への変わらぬ愛情を表現しています。咲きたての花々が飾られた刹那的に美しいコンソールテーブル。脚の連結部分に飾られたロカイユは、ミラーの頭頂部と呼応しています。

今日は、ムッシュ・ガルニエが手掛けたオペラ座のこけら落とし。パリ中がお祭り騒ぎに熱狂し、興奮に沸き立っています。気持ちを静めるため、手袋にラ・ペ通りのお店のお気に入りの香水をまとわせ出かけます。ふと、あつらえたばかりの髪飾りの具合が気になって、ミラーの方を振り返ると、そこには華やかに光り輝くパリの夜が映りこんでいました………。

         



ロココの名画_1
ブーシェ「ヴィーナスの勝利」

ロココの名画_2
ブーシェ「アモールの標的」

ロココの名画_3
ヴァトー「シテール島への巡礼」

ロココの名画_4
フラゴナール「愛の泉」