毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

おすすめ商品のTOPに戻る

スケドーニ「風景の中のクピド」

ブーシェ「愛の標的」

ブーシェ「絵画の寓意二人のキューピッド」

ジャン・ベロー「ペルソナージュ」

ナポレオン3世
金箔貼り天使ペイントショーケース

1860年代 フランス

1851年12月2日、クーデターを成功させたルイ・ナポレオンは、翌年フランス皇帝として、第二帝政皇帝に着任します。ナポレオン3世時代が到来しました。皇帝は、かねてから構想にあった、パリを大改造する壮大な計画に着手します。ロンドンのハイドパークやリージェントパークを見て、パリにもこれに負けない公園をと、ブローニュの森を整備します。そして凱旋門からブローニュの森へ続く大通りに、皇妃ユージェニーに捧げるべく、「アンペラトリス(皇妃)大通り」という名を冠します。アンペラトリス大通りには、貴族やブルジョワ達が豪華な馬車で集うようになり、第二帝政の社交界の象徴とされ、1860年代にはヨーロッパの最新ファッションの発信地となりました。
今月の夢織のおすすめは、1860年代フランス製、ナポレオン3世金箔貼り天使ペイントショーケース。当時のフランス上流社会の優雅な生活が偲ばれる豪華なお品です。
それでは細部を見ていきましょう。

           

少し古色めいた金箔の優雅なきらめきと、シックなシルバーグレイの織りなすエレガントなコントラスト。フランスの極上の美意識が漂っています。ショーケースに近づいて覗き込みます。ガラス扉から見える、淡いシャンパンゴールドの張り布の優雅さ。ガラス越しに見える花籠柄や薔薇柄の地模様が、細部のデザインと響き合います。扉の周囲に見えるゴールドのブレードは、名画を縁取る額のよう。
氷が張りつめた冬の湖面を想起させるガラス棚に置かれたのは、どんな調度品だったのでしょう。ガラスや光沢のある貼り生地に宿るきらめく光が、部屋の中のショーケースを宝石箱に変えてしまいます。

           

視線を離してみましょう。
ショーケース頭頂部の帯状の装飾。折り重なる月桂樹に金箔が貼られ、この家具を優しく祝福しています。
ヨーロッパの室内装飾を彩る豪華な金箔細工。17世紀の絶対君主たちを魅了した日本の蒔絵が、ヨーロッパの装飾芸術に変化をもたらしたという興味深い事実は、日本ではあまり知られていません。贅沢な金箔貼りの細工の起源はヨーロッパのルネサンス伝統の造形美と、日本の清々しいまでに美しい金箔細工の融合。ヨーロッパ独自の金箔細工は、17世紀以来引き継がれ、宮廷から貴族の館、ブルジョワジーの生活を彩っていました。

           

左右の扉に下がる花綱。大輪の薔薇、咲きかけの薔薇が、女神のヘッドドレスのように扉を装飾しています。
そして中央部分に連続する黄金の装飾の数々。愛の天使クピドを導くキャンデラブラムの構図です。

        

大輪の薔薇を中央に設えた花綱から、連続的に装飾されるデザイン。花籠に活けられた薔薇の花々。
その下に、愛の天使クピド(キューピッド)を暗喩する矢筒と黄金の矢。ロマンティックなモチーフを、交差しながら装飾する薔薇の花綱と勝利の月桂樹。薔薇はクピドの母親美の女神ヴィーナスの象徴です。愛と勝利に彩られた黄金の装飾。柔らかな花びらや、しなる葉。立体的な造形に金箔を貼ることで、表面に輝きや陰影が生まれ、よりいきいきとデザインが浮かび上がっています。
漆器の表面に漆で文様を描いて浮彫状にしたものに、金や銀の金属粉を蒔くことで定着させた高蒔絵の影響がここに見られます。

        

中央部下部のクピドのペイント。背中に羽を生やした愛らしいクピドが、森の中で恋の矢を射ようと構えている瞬間です。視線を上に、矢を上向きに構え、今まさに射ようとしています。悪戯好きのクピドの矢に射貫かれた人物は、熱烈な恋の虜となってしまいます。さて、誰がクピドを惹きつけたのでしょう。アカンサスの金箔貼りが、額のように画を彩っています。

       

左右対称の扉の下方には、花束。印象的な円形に取り囲む金箔細工。エプロン部分はアントワネット好みのリボン装飾。中央の唐草から左右に薔薇とスミレの花綱がしなやかに伸びています。華奢な脚には、アカンサスが装飾され、全体のイメージに可憐さを加味しています。
サロンのパトロンヌ(女主人)たるもの、お気に入りのショーケースには、自慢の調度品を飾りたいものです。支援している演奏者が現れるまでの時間に、招待したお客様に楽しんで頂きたい。椅子やテーブルなど、集めるアンティークは教養の証。選び抜いたサロンの招待客のために最高の空間で、最高の演奏者を招いてサロンは意味を成します。
ガルニエ宮の桟敷席も、週末の鴨猟も、生活には欠かせない要素。
19世紀の上流階級の生活を、ここに再現できる喜び。さて、金色のクピドのショーケースに、何を飾りましょうか………。

        

ジャン・ベロー「夜会」

キャンデラブラムとは、ルネサンス期の柱や建築の装飾に描かれた、帯状に連なる文様。

ジャン・ベロー「ア・パリジャン・バル」

ジョルジュ=ウジェーヌ・オスマン(1809-1891)
ナポレオン3世指示のもと、今日のパリ市街の原型となる、パリ改造計画を推進し、フランスの近代化に貢献した。