毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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マリア・テレジア(1717〜1780)
ハプスブルク家出身の女帝。ハンガリー女王、オーストリア女大公、神聖ローマ皇后の称号を持った。刺繍が趣味で特にプチポワン刺繍を愛し、東洋の漆器のコレクターとしても知られている。

マリー・アントワネット(1755〜1793)
マリア・テレジアの第11女。肖像画はオーストリア皇女時代のもの。

エリーザベト・アマーリエ・オイゲーニエ・フォン・ヴィッテルスバッハ(1837〜1898)
オーストリア皇女。当時ヨーロッパ一の美女と称えられた。172センチの長身で体重は47キロを超えたことはなく、数々の美容法に専心していた。

フランツ・ヨーゼフ1世(1830-1916)
オーストリア帝国皇帝。エリーザベトと大恋愛の末結婚。

ウイーン ディスプレイキャビネット

1880年代 オーストリア

1883年、ヨーロッパ屈指の工業国として目覚ましい経済発展を遂げたオーストリア、ウィーン。フランツ・ヨーゼフ帝の帝都大改造によって、ウィーンが近代都市として生まれ変わりつつありました。そして今まさに、ウィーン新市庁舎完成を祝した大舞踏会が始まろうとしていました。
タキシードの紳士たちが、煌びやかな宝石と最新流行のドレスを身にまとった貴婦人をエスコートして、ダンスが始まります。オーケストラの楽曲にのって色とりどりの花びらが開くようにドレスの裾がひらめき、夢のような世界が繰り広げられます。
人々は、ハプスブルグ帝国の繁栄のもと、平和と幸福に陶酔していました。

今月の夢織のおすすめは、1880年代ウィーン製のディスプレーキャビネットです。

芸術と文化が華開く帝都ウィーン。多民族国家ゆえ多様な文化が混在する中、高尚で審美的な芸術が萌芽した黄金時代………そんな華やかな時代から、時空を超えてかくも優雅なショーケースがやって来ました。ウィーンの上流階級の暮らしを写しだす装飾芸術品。

それでは細部を見ていきましょう。

 

高さ2メートル11センチ。見上げる高さのショーケースです。頭頂を冠のように飾る、ロカイユの透かし細工。そして貴婦人のドレスの裾のようなドレープ状の曲線が、水面の波紋のように左右に広がります。ロカイユからしなやかに伸びるバラ。みずみずしく柔らかな葉の表現まで精密に刻まれています。



ガラス扉の飾り棚。ガラス扉は、美しいロカイユと花々でトリミングされています。ロカイユのデザインが個性的で、周辺が炎のゆらめきのように幻想的に表現されています。最高級のマホガニーの、つややかで深みのある木肌が、優しく曲線を描く花や植物を柔らかく優美に演出しています。曲線的な波ガラスが嵌め込まれた扉には、シャンデリアの光がきらきらと差し込み、飾られた邸の主自慢のコレクションが、訪れた客人の眼を楽しませたことでしょう。ハプスブルク家の女帝、マリア・テレジアが援護していた、ロイヤル・ヴィエナの色鮮やかな銘品が飾られていたのでしょうか………。
        


飾り棚と下部の棚を繋ぐ装飾的な引出部分。とてもめずらしいデザインです。波紋状の曲線を描く部分はごく薄い引出になっています。頭頂部の曲線と呼応して、このショーケースをとびきり優雅にデザインしています。
ショーケース全体に施される曲線は、詩のように美しく、この家具を特別な芸術品に昇華させています。

       

下部の観音開きの扉の装飾は、ロカイユ・アカンサス・花々と、ロココの美意識がふんだんに盛り込まれ、続く4本のカブリオールレッグ(獣脚)に加えられた木彫は、太陽のようにも、花のようにも、ロカイユのようにも解釈できます。
19世紀末、歓楽の都ウィーン。音楽を愉しみ、シュトラウスのワルツに載ってダンスに興じ、生活の中で芸術を大いに楽しんだ上流階級のひとびとの暮らし。華やかで儚く終わったウィーンの黄金時代を見守っていたショーケースが、奇跡のようにここに訪れました。

         



ハンス・マカルト(1840〜1884)作 「裸婦」1879年
この家具が作られた1880年代のウィーンにあって、「時代の寵児」と評された天才画家。彼が活躍した19世紀後半は、「マカルト時代」と呼ばれた。後にクリムトに影響を及ぼした。

リングシュトラーセ
ウィーンの人口の爆発的な増加に伴い、フランツ・ヨーゼフ帝は大規模な都市計画を実施した。リングシュトラーセ(環状道路)を中心に、ホーフブルク王宮や美術史・自然史博物館、国立オペラ座、国会議事堂などが次々と建造された。富裕層の市民は、マカルト・ファッションで着飾ってリングシュトラーセを闊歩した。

コーヒーとウィーン
ウィーンにコーヒーをもたらしたのは、トルコ軍だとも、レオポルト1世にカフェを開業することを許されたアルメニア商人だとも諸説あります。カフェはコーヒーとウィーン名物のザッハトルテやアプフェルシュトゥルーデルを愉しむだけでなく、チェスやカードゲームをしながら、芸術や政治について語らう社交の場でありました。

この家具はドラマ「貴族探偵」に使われております。