毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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メダイヨンのモチーフが天井と床に施されたマナー・ハウス(オスタリーパーク)。

ロバート・アダムがデザインしたマナー・ハウスの壁画。古典的なデザインが施され、本作品の張生地の意匠と重なる。

アカンサスとシェルのデザイン

少女時代のマリー・アントワネット

ルイ16世様式 金箔ソファ

1870年代 イギリス

大英帝国史上、空前の繁栄を誇った時代、ヴィクトリア期。7つの海を支配した帝国には、様々な宝石、高級銘木、金糸銀糸が織り込まれた絹織物、極上のシガーや東洋の漆器………世界中のありとあらゆる物資が集中し、人々は豊かさを謳歌しました。

広大な領地には、貴族達が自らの権力の象徴として贅をつくした邸を構えました。広大な玄関ホール、古代ギリシャの神々がブロンズ像となって居並ぶ控えの間、家紋入りの革張りの蔵書が整然と並べられたロング・ギャラリー、館の主が支援するピアニストが新作を発表する場であるミュージックルーム、巨大なバカラのシャンデリアが燦然と輝くダイニングルーム………邸はまた、貴族社会にとって最も重要な社交の場でありました。

今月の夢織のおすすめは、1870年代イギリス製、ヴィクトリアン ルイ16世様式 金箔ソファー。存在そのものが、空間をぬり替えてしまう迫力。イギリスのマナー・ハウスから譲り受けた、正真正銘の、貴族の生活の中で使われていたお品です。このスタイルのソファーは、ヨーロッパの名だたるお城に見受けられます。

ヴィクトリア女王時代のイギリスで、リバイバル流行した新古典主義のデザインが、黄金に光り輝くソファーに、風格を与えます。目にするだけで、心躍る美しさ。かつてどんな人物たちが、ソファーが置かれた空間を彩ったのでしょうか。
それでは細部を見ていきましょう。

          

幅152センチ。3人の人物が腰掛けるようにつくられたソファ。全面に張られたつややかな繻子織の生地に施されたデザインは、ソファ全体の古典的な意匠と呼応します。古代ギリシャ・ローマ時代からヨーロッパで好んで使われてきたメダイヨンの連続模様。メダイヨンは、ローマ皇帝が、凱旋将軍をねぎらうために授与した大型のメダルが起源と言われ、宮殿や上位貴族の邸の天井や床に使われる代表的な装飾モチーフです。

メダイヨンを取り囲むのは、高貴のしるしとされた真珠の連珠紋。それを更に取り囲む可憐なツリガネソウ。優雅に曲線を描くアカンサスや、添えられた花々。美と愛の女神ヴィーナスを象徴するシェル文様………黄金を背景に浮かび上がる様々なモチーフが、ソファをさらに高貴に演出します。

          

肘置きに施されたアカンサスの彫刻。古代ギリシャ時代に生命力の象徴として神殿や宮殿の柱頭飾りに好んで使われました。その後ローマ、ビザンティン時代には幅広く室内装飾に用いられるようになり、ヨーロッパの古典的デザインとして定着しました。

          

張り巡らしたゴールドのモールと、響き合うらせん状のリボンの彫刻。木彫が織りなす陰影は、金箔を施すことによって、より立体的に視覚に訴え、目を楽しませてくれます。

そして、華奢ですらりとした印象の直線的な脚。隅々にまで葉飾文様が施されています。「黄金」をこよなく愛し、ヴェルサイユ宮殿に私室「黄金の間」を設けたマリー・アントワネットと、古典的な室内装飾を好んだルイ16世の美意識が、ソファ全体に織り込まれています。このソファを注文した邸の主は、マナー・ハウスの風格にふさわしい室内装飾を求めたのでしょう。

幾つもの門やカーブを過ぎて果てしなく伸びる塀の向こうに、広大な邸が現れました。玄関ホールを抜け、長身の執事に導かれて通された広間。勧められたソファは、夢の世界のように美しく、黄金色の光を帯びています。ドアが開き、不敵に微笑む痩身の青年貴族が現れました。
悲劇が起こるか、はたまた喜劇か。物語が、いま、幕を上げました………。

          

バラを手にしたアントワネットの肖像

黄金のヴェルサイユの室内装飾

ルイ16世

本作品は、フジテレビ月9ドラマ、「貴族探偵」で使われています。

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