毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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1.ルイ15世 バカラの工場を創設する許可を与えた

2.ルイ18世 バカラにグラスセットを特注することで、各国の王室でバカラが流行する

3.ロシアの皇帝ニコライ2世と家族。バカラの技術を成長させたのは、大量のグラスやシャンデリアを作らせたロシア王朝と言われる。

4.エドワード8世も所有するヨットで使うグラスをバカラに特注している。デザインはシュヴァリエが担当している。

バカラ デキャンタセット
「レイラ」

1940年代 フランス

むかしむかし、遠いペルシャの国。少年カイスは、美少女レイラと出会い、恋に落ちます。カイスの一途な情熱は、彼を狂気に駆り立ててしまいます。恋狂いのカイスは「マジューン(狂人)」と呼ばれるようになり、レイラとは引き離され、レイラを一身に思いながら、人里離れた山に向かい、森の生き物たちと暮らすようになります。

王者のクリスタル・ガラス、バカラ…。
その、水晶に例えられる高貴な透明感。この世のすべての光を燦然とまとうその姿は、幾多の王族や英雄たちの魂を釘付けにしました。フランスブルボン王朝、皇帝ナポレオン1世、ロシア皇帝、インドのマハラジャ、トルコのスルタン、日本の皇室…この世の贅を知り尽くした王侯貴族は皆バカラの美しさの虜となり、バカラを所有することは、いつしか人々の憧れとなりました…。

今月の夢織のおすすめは、バカラデキャンタセット、パターン名「レイラ」、1940年代フランス製。或る世界的に有名なミュージアムに渡る寸前に、ご縁あって譲り受けたお品です。
奔放に遊び戯れる森の生き物たち。バカラの高度な技術が、繊細で緻密なデザインを見事に表現します。

デキャンタ、シャンパングラス、白ワイングラス、赤ワイングラス、リキュールグラス………完璧なグラスセットです。豪華に並べられたパーティー会場では、どんな人々が集ったのでしょうか。

それでは細部を見ていきましょう。



デキャンタの、蓋を引き抜いてみましょう。手のひらに冷ややかに収まる、煌めくクリスタルガラスの重さ。渦巻く繊細な唐草模様の中心に、羽を休める異国の鳥。表裏と施されているため、手のひらの上で、描かれる姿が重なります。まるで、宝石を手のひらに乗せたような美しさ。
本体に描かれる森の風景も表裏に施されているため、重なって見える景色はこのうえなく幻想的です。この中に深い色のリキュールや赤ワインを注げば、よりはっきりと見え、楽しめることでしょう。
このデキャンタの大きな特徴は、独創的なシェイプです。打ち寄せるカスピ海のさざ波のような造形的な形が、儚いクリスタルガラスでつくりあげられています。アンティークバカラは、気の遠くなるような過程を経て優美なフォルムを作り上げました。些細なミスひとつで壊れてしまうガラス。幾人もの職人の手を経てつくられる過程に、一切の妥協を許しません。
デキャンタの底を裏返して見ると、誇り高いバカラのマークがエッチングされています。


レイラをデザインしたのは、バカラを代表するデザイナー、ジョルジュ・シュヴァリエです。ロシアを代表するバレエ団の舞台美術に携わっていたシュヴァリエは、1916年バカラのデザイナーに就任します。以来、世界中の王族や貴族を数々の作品で魅了しました。バカラの最高の技術には、その時代屈指のデザイナーが構想する斬新なシェイプを実現させるだけの力量がありました。



エッチングで描かれる、繊細で華麗な森の住人達。あどけない仔馬、悪戯好きのウサギ、愛らしい鹿、羽を広げ優雅に飛翔する鳥、寡黙な蝸牛、可憐な蝶…馬に乗った青年が、笛を吹き、いっせいに森の住人達が遊びます。青年は、カイスでしょうか。幻想的でエキゾチックな文様は、見る者の眼をいつしか遠い昔の恋物語の世界へと誘います。
見ると、連続する絵物語のように、グラスによって描かれている生き物たちは変わっています。

           

優雅に渦巻く唐草文様は、カイスの元に風に乗って運ばれてくる、愛しいレイラの香りを表現したのでしょうか…。
他の男性に嫁がされたレイラは若くして夭折し、カイスはレイラの死を悼みながら天国に召され、二人は天国で永遠に結ばれます。二人の永遠の愛を、森の生き物たちが見守っています。

バカラの伝統と技術が成し得た豪奢なデキャンタセット。
大貴族のディナーは、贅を尽くして作らせたバカラのシャンデリア、シャンデリアの姿を映し込むミラー、そして、宝石のようにたたずむバカラのグラスが存在していました。
燦然と光り輝くディナールームで、繰り広げられた歴史の一幕。王侯貴族のうたかたの夢の世界が、今ここに蘇えります。

        

5.パリ万博に訪れた各国の王侯貴族は、競ってバカラにシャンデリアやグラスセットを特注した。

6.ジョルジュ・シュヴァリエは、バカラに動物モチーフのデザインを持ち込んだ。動物のクリスタルフィギュアは代表的なものである。

7.シュヴァリエは時代の寵児、ロシアのセルゲイ・ディアギレフ率いるバレエ・リュスの舞台美術に携わっていた。バレエ・リュスの作品制作には、ジャン・コクトーやピカソが参加していた。

8.本作品は2017年2月に夢織福岡小倉本店にて開催された、アンティークバカラ展にて展示されていました。