毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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1.マリー・アントワネット
バラとリボンのモチーフをこよなく愛した。

2.マリー・アントワネットの私室
本作品と同様のクッションがついたアームチェアが置かれている

3.ポンパドゥール侯爵夫人
ロココ芸術の偉大なるパトロンであった、才色兼備の貴婦人。

4.ポンパドゥール侯爵夫人の私室
心地良く過ごせる室内装飾は、ロココ様式と呼ばれた

ナポレオン三世 ルイ16世様式 ウイングチェア

1870年代 フランス

ウイングチェア………くつろぎの空間を彩る椅子。高く深い背もたれが身体を包み込み、肘掛けの上のウイングが、マントルピースの火気から横顔を守るデザイン。ゆったりと身を包み込んでくれる形状は、時間さえ忘れてしまう至上の安らぎを与えてくれます。
かつては王や高位聖職者の「権力の象徴」であった椅子は、時を経て「快適さ」が重視されるようになります。フランスではロココの時代に、より快適な座り心地が求められ、美しい布張りの椅子が王侯貴族の間で愛用されました。
今月の夢織のおすすめは、1870年代フランス製ナポレオン三世 ルイ16世様式 ウイングチェア。弊社社長萬田あけみが、デザインから座り心地まで、当時の貴族が体感した「くつろぎ」を徹底的に再現いたしました。
それでは細部を見ていきましょう。

         

ゆったりと広い背もたれの、極上の深紅が織りなす花模様。ヴェルサイユ宮殿で使われている生地を使って、張り替えました。つややかな光沢のシルクの質感が、華麗な花紋様を引き立てています。中央に咲き誇る大輪のバラ。やさしく寄り添う花々は、すこし首を傾げ小花の花綱で華麗なブーケにまとめられています。それぞれのブーケを連鎖的につなげるのはアカンサスの葉。アカンサスにからまる花綱には、しなやかなリボンがまとわりつき、花々が永遠の春を謳歌しているかのようです。赤という色は、ヨーロッパでは古くから高貴の色とされてきました。キリスト教では、赤は救済と愛の象徴であり、騎士にとっては神に対する誓いの色でもありました。染織家たちは、鉱物や植物、昆虫などから、色あせない赤を生み出すために研究を重ねました。このようにして生み出された赤い染料はあまりにも高価であったため、赤い布を手に入れることができるのは限られた人々でした。赤が高貴であるという意味は、そのままヨーロッパの歴史を物語っています。

         


椅子のフォルム。S字型を描くウイングが、肘掛けに連なり、優雅な曲線を描きます。そして直線的なフォルムの華奢な脚に繋がっていきます。曲線と直線のコントラスト………ルイ16世スタイルの直線的なフォルムが、椅子に端正な印象を与えています。木枠に施される頭頂部のリボン、アカンサスの葉模様、連なる真珠の粒のような丸い木彫、教会のステンドクラスに見られるバラ紋。明るいウォルナットの木目が、最大限に活かされ木彫の陰影が椅子に風格を加えています。
ゆったりと半円形にせり出す座面には、贅沢にもフェザー(水鳥の羽根)が詰められたクッションが付いています。フェザーは、宮廷趣味を忠実に守るため、わざわざヨーロッパから取り寄せました。ヨーロッパではフェザーをつめたクッション、寝具はあまりにも高価であったため、古くは王族しか使うことができませんでした。フェザーは中世以前、北方の海賊ヴァイキングの交易によって徐々にヨーロッパ各国にもたらされ、銀や絹、武器と同等の価値がある高級品として珍重されたといいます。

ウイングチェアに腰かけてみましょう。椅子に座る、というより包まれる満足感です。ウイングが馬車の幌のように視線を覆うので、密やかな空間も愉しむことができます。
深紅のシルクが手のひらに触れると、心に高揚感が訪れます。赤の持つ華やかさ、高貴さが、晴れやかな気分にさせてくれます。

そして空に浮かぶうららかな雲の上に座っているようなクッション。空気をはらんだ羽毛は、うっとりと柔らかな感触。かつてこの椅子に腰かけた貴婦人たちの、豪奢なドレスの衣擦れが聴こえてくるようです。

貴族のくつろぎの再現。心豊かに流れる時間を愉しみながら、生活の中に美しさと贅沢を取り入れる歓び。心を満たす幸福感は、きっとかつての所有者と同じものでしょう。

         


5.教皇ウルバヌス8世
高位聖職者は、豪奢な衣装で権力を誇示した

6.騎士の叙任(エドモンド・レイトン作)
騎士が身に着けているのは、神のために捧げる自らの血の色、赤。

7.北方の海賊ヴァイキング
ヴァイキングの活動によって、ヨーロッパから極東アジアまで交易が実現された。

8.水鳥のフェザー