毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

おすすめ商品のTOPに戻る

1.ポライウォーロ「 アポロとダフネ 」1480年頃 ロンドンナショナルギャラリー※

2.フランソワ・ブーシェ「キューピッドを慰めるヴィーナス」1751年

3.マリー・アントワネット(1755-1793)

4.ルイ16世(1754-1793)

ナポレオン三世 ウエッジウッド陶板ショーケース

1860年代 フランス

1774年、イギリスの陶工ジョサイヤ・ウエッジウッドが生み出したТ錙◆屮献礇好僉璽Ε┘◆廚蓮▲茵璽蹈奪僂縫札鵐察璽轡腑鵑魎き起こしました。淡い色の背景に浮かび上がる、純白の神話が描かれた、美しい石膏細工のようなТ錙帖帖銚殿絅蹇璽泙琉篝廚ら発掘されたカメオガラスの壺、「ポートランドの壺」に魅せられたウエッジウッドは、4年の歳月をかけて陶器で再現することに成功したのです。ジャスパーウェアは、プレートやティーセットといった食器や、家具やピアノ、マントルピースなどを装飾する陶板につくられ、各国の王族を虜にしました。特にフランス国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは、ジャスパーのメダイヨンで室内を飾らせることを好みました。
そして時は流れ………豪華なパーティやオペラ、サロンコンサートなど、ふたたびパリに贅沢を謳歌する文化が戻ってきた第二帝政時代。ナポレオン3世の皇妃ウジェニーは、厳格なフランス宮廷のしきたりに戸惑いを感じ、自らの立場を、同じく外国からお輿入れしたマリー・アントワネットに重ねるようになります。アントワネットの遺品をコレクションしたり、アントワネットが愛した装飾趣味に傾倒しました。当時時代のファッションリーダーであったウジェニー皇妃の影響で、フランス上流社会にアントワネットブームが起こりました。

今月の夢織のおすすめは、1860年代フランス製ナポレオン三世 ウエッジウッド陶板ショーケースです。フランスで作られたショーケースに、イギリスから取り寄せたジャスパーウェアの陶板が飾られています。ルイ16世とアントワネットが愛した贅沢が、リバイバルされています。
それでは、細部を見ていきましょう。

         

溜息が出るほど美しいローズウッドの木目が、ショーケース全体を覆っています。はちみつ色と、明るい褐色と、小麦色の木肌が、放射線状に層をなして輝いています。削るとバラの香りがするため、ローズウッドと呼ばれるこの木材は、現在では大変稀少であり、1立方メートルあたり数百万から1千万という高値で取引されています。極めて木肌が美しいローズウッドを全面に化粧張りする贅沢は、まだ木材物資が豊かであった19世紀のヨーロッパである故に可能でありました。



扉上部に、月桂樹の冠を頂いたブロンズの女神が装飾されています。その繊細で美しい貌は気品を湛え、ギリシャ語で「月桂樹」を表すダフネであることを暗示しています。

アポロンの恋を拒んで月桂樹に変身した美しいダフネが、4面全てに装飾されています。扉に貼られた波ガラスはオリジナルのもので、危うい曲線が、光を取り込み、中に飾られる自慢の調度品を照らすことが計算されています。ショーケース内部に貼られているのは、弊社社長萬田あけみがセレクトした生地です。バラの地模様が、光沢のある濃く赤いバーガンディの生地に映え、ショーケースを一層豪奢に仕立てています。

         

そして、中央扉下部に装飾された、陶板。思わず目を奪われる、陶板の大きさ………。幅17センチ、長さ20.5センチ。ジャスパーブルーと呼ばれる清々しい水色の素地に、天空に遊ぶ美の女神ヴィーナスとその愛児キューピッド。心地よい風に吹かれるヴィーナスの衣。伸びやかに飛翔するキューピッドの背景には、繊細に浮かぶ淡い雲が刻銘に表現されています。ウエッジウッドは、着色した素焼状の素地に、白く彫像を浮かび上がらせるこの特殊なТ錣鮑遒襪里法3000種類以上の色を試し、窯内部での温度計測を徹底管理した実験を根気よく重ねました。陶工とは、科学者であり、芸術家であり、錬金術師であったといえましょう。彼が情熱を注いで為し遂げた火と土の化学反応は、卓越した装飾芸術品を生み出しました。



すんなり伸びる4本のカブリオールレッグ(獣脚)には、足先まで優雅な花と植物のブロンズ細工が施され、華麗な宮廷趣味を演出しています。そして、天板に貼られた大理石。かつてそこには甘くみずみずしく香る花々が活けられた花瓶が飾られ、パーティの招待客たちの眼を大いに楽しませたことでしょう。
ダフネを月桂樹に変身させてしまったのは、キューピッドのアポロンに対する怒りが巻き起こした結末でした。月桂冠をいただき、静かにたたずむダフネ。そして美しい母ヴィーナスと、無邪気に遊ぶキューピッド。美と運命の連鎖が、この美しいショーケースを神話化しています。
そして、神話化されてしまった、19世紀のパリ。神話の主人公のような、パーティーの参加者達。シャンデリアが映り込むミラー、デコルテを宝石で飾りたて扇で顔を隠しながら物憂げな視線を投げる貴婦人、久しぶりに再会した友人とバルコニーに出て、広大な庭を眺めながら、学生時代の思い出を語る青年将校………シャンパンの美しい泡のように消えてしまったあの日々を、いまふたたびこのショーケースが、鮮烈に蘇えらせてくれます。

         




※1.ある日、太陽神アポロンは、戯れにキューピッドをからかいます。怒りに駆られたキューピッドは、アポロンには恋の矢を、美しいダフネに鉛の矢を放ち、アポロンはダフネに対する一方的な熱情に駆られます。そしてアポロンを冷たく拒むダフネの鉛色の心。恋い焦がれるアポロンを拒んで、遂にダフネは月桂樹に変身してしまいます。

5.「王妃と子供たち」エリザベート=ルイーズ・ヴィジェ=ルブラン

6.ウジェニー・ド・モンディージョ(1826-1920)

7.ジョサイヤ・ウエッジウッド(1730-1795)

8.ポートランドの壺