毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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ナポレオン3世のグラン・サロン。本作品と似たソファが見える。

ナポレオン3世

ナポレオン3世皇妃ウジェニー

ナポレオン3世ルイ16世様式 金箔ソファ

1860年代 フランス

ナポレオン3世という皇帝が現れ、フランスは新たな時代を迎えます。パリは大改造され、国際的な大都市として生まれ変わった第二帝政。フランスの社交界は再び息を吹き返しました。ナポレオン3世と皇妃ウージェニーは、歴史に残る数々の舞踏会を催します………。


その舞踏会は、ペローの「コント」のカドリール(4組のカップルが四角になって踊るダンス)で始まりました。招かれた貴婦人たちは、それぞれのグループごとにエメラルド、トルコ石、オパール、ルビーを着けるといった趣向を凝らし、「土」、「空気」、「水」、「火」のカドリールを舞います。貴婦人たちのきめ細やかな白い肌に星々のように輝く、カルティエでつくらせた大粒の宝石の装飾、シャンデリアのクリスタルガラスのきらめきの魔法で、やがて現実世界がエデンの園に溶け込んでゆきます。
そして扉が開き、かつてナポレオン・ボナパルトが戦利品としてヴェネツィアから持ち帰った、サン・ジョルジョ・マッジョーレ修道院の大食堂の壁画を模してしつらえたリビングルームが現れます。

皇帝を先頭に、神話の神々のように美しく着飾った貴族達は、手に手を取り、オーケストラが奏でるマイヤーベアーの「預言者のマーチ」にのって扉の向こうへと消えてゆきました。
今月の夢織のおすすめは、1860年代フランス製ナポレオン3世ルイ16世様式金箔ソファです。第二帝政絶頂期のきらびやかな舞踏会の余韻を残す、絢爛豪華なソファ。選ばれた方のために、用意されたお席です。
それでは細部を見ていきましょう。

         

背もたれの透かし彫刻。ヨーロッパの古典的な装飾文様であるスクロール(渦巻)が、黄金に輝きながら頭頂部を王冠さながらに装飾します。

S字が絡み付く中心の文様から、左右にスクロールが連なり、やがてアカンサスの葉のうねりに終結しています。スクロール文様は、単独で使われることはなく、C字やS字型にくねり、連続して繋がれ装飾されます。ケルト美術を代表する意匠であるスクロール文様は、太陽を表現したと語り継がれており、永遠に連なるがごとく流動するデザインは、運命や宇宙の神秘、「気」の動きを現すとも言われています。

         

アームの先から意匠が凝らされた足先、座の下部のエプロン部分に至るまで、ソファの枠はすべて贅沢にも金箔に覆われています。優雅で神秘的な透かし模様に貼られた金箔は、曲線の流れに荘厳な陰影をもたらし、家具にさらに魅力的な表情を与えています。

         

思わず目が惹きつけられる、エメラルドグリーンの色彩。新しい生地の張り替えデザインは、弊社社長萬田あけみのオリジナル。黄金の装飾に彩られたエメラルドグリーンは、優雅な貴婦人が身に付ける宝石を彷彿とさせます。
地模様に浮かび上がるダマスク文様。爽やかな光沢にロカイユとアカンサスが連続的にデザインされています。ロカイユは、優美なロココ芸術の象徴的文様。アカンサスは、古代から生命力の象徴としてヨーロッパで愛されてきました。左右対称に整然と並ぶ装飾に、華やかなロココの余韻が香ります。ルネサンス以降、エキゾチックな東方の文様への人々の興味は移り変わり、古代ギリシャローマ時代に使われていた花や植物が積極的にデザインに取り入れられるようになり、ヨーロッパらしい植物文様が発展しました。

         

背もたれのボタン留めは、シルクの光沢をより魅力的に引き立てています。左右のドレープに沿って巻き付く金のブレードは、エレガントなドレスを彷彿とさせます。腰かけてみると、ゆっくりと柔らかく身体がひんやりとしたシルクに包まれ、安堵に似た幸福感が陶然と訪れます。
来客を待つ静寂の中、金とエメラルドの色彩が空気に溶け込みます。シャンデリアの光の粒子が、浮遊するようにシルクをなぞり、立ち昇る香りに似た幸福感に身体ごと包まれてゆきます。突然静寂を破って扉が開き、踊るように訪れる魅力的な来客たち。舞台の幕が開くように、パーティーの始まりです。
100年以上の時を経て、よみがえる豪奢な瞬間。エデンの園の宴が、いまここに再現されます。

         

ジェームス・ティソ「或る夜会」james tissot_une soiree

ヴィンターハルター「ウジェニー皇后と女官たち」

マリー・アントワネット
ウジェニーが憧れ、遺品をコレクションしたため、当時のフランス社交界でアントワネットブームが起きた。