毎月1点アンティークの逸品をご紹介します。

夢織のおすすめ

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1.ブロケード織
ブロケード(brocade)とは、絹織物の一種で、綾織あるいは朱子織の素地に、浮き模様を織り出した織物のことです。カーテンやベッドカバー、ドレスに使われる高級織物で、マリー・アントワネットはヴェルサイユ宮殿の私室をブロケード織のファブリックで装飾しました。王妃の私室のカーテンやベッドカバーは、夏と冬に取り換えられたと記録されています。

2.リヨンの絹織物
リヨンは、ヨーロッパを代表する絹織物の街です。16世紀、イタリアから養蚕技術が伝わり、国王フランソワ1世の庇護の元、一大絹織物産地に成長しました。ルネサンス以降はフランス独自のデザインスタイルを確立し、数々の優秀な図案職人を産出しました。現在もパリコレのオートクチュール等の特別注文を請けながら、最高品質の高級織物を作り続けています。

3.マリー・アントワネットの横顔―ウィーンから連れて来たショコラティエ
チョコレート好きだったアントワネットは、フランスにお輿入れする際、ハプスブルグ家からショコラティエを連れてきました。当時のチョコレートは、固形ではなく甘く熱く濃厚な飲み物でした。アントワネットは毎朝、オレンジの花やアーモンドを加えたチョコレートを楽しんだと言われています。

4.マリー・アントワネットの横顔―あの髪形の誕生
或る日、退屈なオペラに行かざるを得なくなったアントワネットは、お抱えの美容師に「誰も考え付かないような、奇抜な髪形にするように。」と命じます。周囲の人々を驚かせて、退屈を紛らわせようとしたのです。王妃の、劇場の天井に付きそうに盛られた奇想天外な髪形は、プーフと名付けられ、あろうことか翌日から大流行したといわれます。

ナポレオン3世ルイ16世様式サロン3点セット

1870年頃 フランス

フランスの至宝、ヴェルサイユ宮殿………。ブルボン王朝の栄華の象徴たる、宮殿の室内装飾は、王位が継承されるたびにその趣を変えてきました。1775年、王妃マリー・アントワネットは、国王専属の建築家であるリシャール・ミクに、宮廷内に円形周柱神殿「愛の神殿」と、スフィンクスが取り囲む8角形の音楽サロン「ベルヴェデール亭」の建築を命じます。
ルイ15世による、曲線と貝に彩られる華麗なロココ様式の宮殿は、新しい王ルイ16世が「古代回帰」と名付けた、直線と左右対称の古代ギリシャ・ローマ的美意識に傾倒した、新古典様式に塗り替えられていきました。

今月の夢織のおすすめは、1870年代フランス製ナポレオン3世ルイ16世様式サロン3点セットです。ナポレオン3世の妃、ユージェニーが熱烈なマリー・アントワネットのファンであったことから、アントワネット趣味がフランスの社交界で大流行していた頃の華やかな作品です。実際アントワネットがサン=クルー城(※5参照)の化粧室で使っていた王妃の紋章入りの椅子や、春の行幸用に注文した椅子とデザインが酷似しており、かつての所有者がこだわって注文した、「アントワネット好み」の調度品であることが伺えます。
それでは細部を見ていきましょう。

         

明るいレモンイエローのシルクサテン地に、白く浮かび上がる典雅な意匠。宮廷趣味の特徴が強い、ヨーロッパ伝統のブロケード織の生地です。古典的な壺に活けられた咲き誇る花々。台座にはみずみずしい果実も並べられています。仮面の装飾にリボンがからまり、先にはキューピッドの象徴である矢とたいまつが結び付けられています。壺上部の左右の山羊は口に花綱をくわえており、花綱は羽を広げた2羽の孔雀がバラに囲まれる台座に連なります。台座からは旗とタッセルが下がっています。ルネサンス以降、イタリアからヨーロッパ各地に拡散した絹織物は、フランスではリヨンで花開き、フランス独自のデザイン性が高い高級織物を産み、各国の宮廷で愛されました。
3人がゆったり座れるソファは、背もたれが少し傾いており、背中をしっかりと支えます。土台となるローズウッドは、圧倒的に美しい木肌で見るものを魅了します。岩のように硬質なローズウッドに加えられた、繊細な彫刻の素晴らしさ。座面に連続的に施されるつぼみの文様、脚と座面を連結するはめ輪に施されるバラ紋の細かい花びらの陰影、登頂部分のバラの花輪に囲まれた矢筒と月桂樹のしなやかな葉の見事さに、彫刻師の高度な技術の粋が伺えます。極めて希少になってしまったローズウッド。現在では上質のローズウッドで家具をつくることは、ほとんど不可能と言われています。



アームチェアーに腰かけてみましょう。
やわらかく身体が椅子に包みこまれていくのが実感できます。背もたれに背中を任せると、首がうずまることで視界が扇状に広まり、落ち着いた気分が訪れます。このような「カブリオレ(Chaise en Cabriolet)」と呼ばれる、背もたれが軽く傾いた椅子は、18世紀の中ごろからヴェルサイユ宮殿に登場しました。
優雅にくねるアームの肘置きの部分には、クッションがつけられているのですが、カバーで覆われており共布でリボン結びにされている優雅さに、思わずため息がこぼれます。肘置きの先には、アカンサスの葉が浮彫されています。
この椅子の最大の特徴である、共布の大きな座面クッション。羽毛がぎっしりと詰められたふかふかのクッションは、雲の上に腰かけるような贅沢さ。このようにクッションがついた、普通の布張りの椅子より座が低い椅子は、「ア・キャロー(a carreau)」と呼ばれます。ア・キャローは18世紀後半にフランスの宮廷で愛され、アントワネット始め貴婦人たちのための椅子であったそうです。
背もたれの支柱や脚のデザインに、新古典主義の特徴が鮮やかです。イオニア式柱頭を模した背もたれの支柱、登頂に見える小さな棕櫚の彫刻が、エキゾチックな東洋趣味をかもし出します。直線的にしなやかに伸びる、縦溝彫刻された脚。独楽をデザインした足トゥピ・サポが、直線・左右対称の古典的美意識に、軽快さと可憐さを演出しています。2脚のアームチェアの登頂部には、それぞれバラの花輪に囲まれた矢筒とたいまつが彫り込まれています。愛の使者キューピッドの到来を予感させる、ロココの名残りが香る意匠です。

サロンセットが並べられた風景。やわらかな日差しが、繊細なレースのカーテン越しに室内に降り注いでいます。きらめきと一緒に、天使が降りて来そうな午後。美しいものが、これほどまでに心を満たしてくれるとは………。
優雅さと華やかさがつくりだす空気に、広間は光り輝いています。

         




※2.フランソワ1世(1494-1547)ヴァロワ朝第9代フランス王。ルネサンスの芸術家達のパトロンでもあった。レオナルド・ダヴィンチをフランスに招聘し、宮殿の建築を命じたが、ダヴィンチの逝去により、計画は幻に終わった。宮殿はヴェルサイユと同等の規模だったという。
※3.夢織所蔵のチョコレートカップ。ハンドルの位置に特徴があるチョコレートカップ。18世紀当時は、チョコレートは現在よりはるかに貴重なものだった。
※4.マリー・アントワネット(1755-1793)王妃のきまぐれから流行したプーフは、頭上に帆船や庭園を乗せるなどますますエスカレートした。
※5.「王妃マリー=アントワネットと子供たち」 アントワネットは、子供を授かってからは、かつての享楽的な生活を捨て、一心に子供に愛情を注いだ。
※8.「ユノに訴願する孔雀」ギュスターヴ・モロー

5.サン=クルー城
1785年、オルレアン公フィリップがパリ近郊サン=クルーに所有した庭園付のお城を、ルイ16世が買い上げます。空気が良く景観が美しいこの地を、国王夫妻は子育てに最適と選んだのです。プチ・トリアノンや黄金の間を手掛けた王妃付きの建築家、リシャール・ミクが、サン=クルー城をアントワネット好みに大改造しました。後に宮殿は、ナポレオン1世が政権を奪うクーデターの舞台となり、歴史的に意味深い場所となります。

6.ローズウッド
別名紫檀と呼ばれる銘木。木質は緻密で、重硬。耐候性に優れ、削るとバラのような甘い香りがすることが名の由来です。熱帯や亜熱帯に分布し、西インド諸島やブラジルからヨーロッパに輸入されました。高級家具や楽器に使われ、鏡面仕上げをすると木肌の美しさがより強調されます。

7.棕櫚(シュロ)
古代メソポタミアや古代エジプトでは、棕櫚は聖樹とされました。落葉がなく、毎年新しい葉をつけ、枯れるまで実が成るので、繁栄のシンボルでありました。キリスト教でも、聖樹とされ、教会を象徴し、信徒を表す動物と共に教会美術に描かれました。

8.孔雀
孔雀の羽模様「百眼」は、ローマ神話では“女神ユノが飼っていた孔雀の羽に、百眼を持つ巨人アルゴスの眼を付けた”という伝説があります。孔雀は毎年羽が生え変わることから、ヨーロッパでは不死と不滅の象徴とされ、織物の図案や壁画、ジュエリーのデザインなどに見られます。